
アパレルデザインにおいて、生地選びは作品の完成度を左右する重大な工程です。
シャツやパンツ、ジャケットなど、アイテムごとに適した素材を選ぶことで、デザインの意図を最大限に引き出すことができます。
今回は、アパレルデザイナー向けに、人気の新作の生地を交えながら、シャツ地を中心とした生地の選び方や素材の基本、活用法をご紹介します。
目次
1.まず知っておきたい生地の基本知識
生地選びの前に、織物や編物、素材特徴を押さえておくと仕上がりのイメージがはっきりします。
生地は糸の組み合わせや仕上げ方によって、見た目や手触り、使い勝手が大きく異なります。
アパレルデザイナーとして、素材の特性を理解することは、デザインの完成度を高めるために欠かせません。特にシャツ地やパンツ地など、用途に応じた生地選びは、着心地やシルエットに直結します。
今回は特に、織物に焦点を当てて詳しく解説します。
織物と編物の違い
■織物
平織、綾織などの織物は、縦糸(経糸)と横糸(緯糸)を交差させて作られる生地で、形状の安定性が高いのが特徴です。織り方や糸の太さ、密度によって、さまざまな表情や機能性を持つ生地が生まれます。以下は、下記で紹介する織物の素材とその特徴です。
■高密度ツイル
斜めの織り目が特徴のツイルは、耐久性と柔軟性を兼ね備えた素材です。高密度に織られたツイルは、滑らかな表面感と適度なハリ感があり、シャツやパンツ、ジャケットなど幅広いアイテムに使用されています。特に、カジュアルなデザインからフォーマルなスタイルまで対応できる汎用性の高さが魅力です。
■コットン/キュプラ ウェザー
コットンとキュプラを組み合わせたウェザー生地は、軽量で通気性が良く、さらりとした質感が特徴です。シャツやライトアウターに適しており、春夏のコレクションにぴったりの素材です。キュプラの光沢感が加わることで、上品な仕上がりを演出できます。
■ドライチノ
チノクロスをベースに、ドライな質感を持たせた生地です。従来のチノクロスよりも軽やかで、カジュアルなパンツやシャツに最適です。耐久性が高く、シワになりにくい特性を持つため、日常使いのアイテムに向いています。
■かつらぎ
厚手でしっかりとした質感を持つかつらぎは、ワークウェアやミリタリーテイストのデザインに多く使用される素材です。丈夫でハリ感があり、パンツやジャケットに適しています。カジュアルなデザインに重厚感を加えたいときにおすすめです。
■編物
編物は、糸をループ状に編んで作られる生地で、伸縮性や柔軟性が特徴です。カットソーやジャージー素材に多く使われ、動きやすさや着心地の良さを重視したデザインに適しています。たとえば、ポンチやスムース、リブニットなどが代表的な編物です。ただし、今回は織物に焦点を当てて解説するため、編物をお求めのお客様は下記のコンテンツがおすすめです。
3.シャツ地に適した素材と特徴
シャツはアパレルデザインの中でも特に汎用性が高く、素材選びが重要なアイテムです。以下は、シャツ地として人気の高い素材とその特徴です。
■ローン
ローンは非常に薄手で軽やかな平織の生地です。透け感があり、柔らかく滑らかな手触りが特徴で、春夏のブラウスやシャツに最適です。エアリーなデザインやフェミニンな雰囲気を演出したいときにおすすめです。
▼ローン生地はこちら
■ブロード
ブロードは細い糸を高密度に織り上げた平織の生地で、滑らかな表面感と適度な光沢が特徴です。ドレスシャツやフォーマルなアイテムに適しており、上品で洗練された仕上がりを求めるデザインに最適です。
■ポプリン
ポプリンはブロードに似ていますが、縦糸と横糸の太さが異なるため、独特の畝(うね)が生まれます。しっかりとしたハリ感があり、カジュアルシャツやワークシャツに適しています。耐久性が高く、日常使いのアイテムに向いています。
▼ポプリン生地はこちら
■タイプライター
タイプライターは高密度に織られた平織の生地で、シャリ感とハリ感が特徴です。軽量でありながら丈夫で、シャツやシャツワンピースに適しています。ミニマルでモードなデザインにぴったりの素材です。
▼タイプライター生地はこちら
■コーデュロイ
コーデュロイは縦方向に畝(うね)がある織物で、秋冬のシャツやジャケットに適しています。畝の太さによって印象が変わり、太畝はカジュアルでヴィンテージ感のある仕上がりに、細畝は上品で洗練された印象を与えます。
▼コーデュロイ生地はこちら
4.特性を活かすポイント
平織、綾織などの織物はその安定性と多様性から、アパレルデザインにおいて非常に重要な役割を果たします。以下のポイントを押さえることで、特性を最大限に活かしたデザインが可能になります。
■用途に応じた素材選び
用途やアイテムに応じて適切な素材を選ぶことが重要です。たとえば、シャツにはローンやブロードのような軽量で通気性の良い素材が適しており、パンツやジャケットにはチノやかつらぎのような耐久性の高い素材が向いています。
■織り方による表情の違いを活用
織物は、平織、綾織、朱子織など、織り方によって異なる表情を持ちます。たとえば、平織はシンプルで均一な表面感を持ち、綾織は斜めの織り目が特徴で立体感があります。デザインのテーマに合わせて織り方を選ぶことで、作品に深みを加えることができます。
■季節感を意識した素材選び
季節感を演出するため、春夏には軽量で通気性の良い素材を、秋冬には厚手で暖かみのある素材を選ぶことで、季節に合ったデザインを実現できます。
5.まとめ

アパレルデザインにおいて、生地選びはデザインの完成度を左右する重要な工程です。特に織物はその安定性と多様性から、シャツやパンツ、ジャケットなど幅広いアイテムに活用されています。今回の記事では、織物の基本知識から、シャツ地に適した素材の特徴、そして織物の特性を活かすポイントまでを詳しく解説しました。
生地選びの際には、用途や季節感、デザインテーマに合わせて適切な素材を選ぶことが重要です。
たとえば、シャツには軽量で通気性の良いローンやブロード、パンツやジャケットには耐久性の高いチノやかつらぎなど、それぞれの素材の特性を活かすことで、デザインの意図を最大限に引き出すことができます。
「おしゃれな生地」を選ぶことは、デザインの幅を広げるだけでなく、着る人にとっての快適さや満足感にもつながります。今回の内容が次の企画の参考になればうれしいです。









