アセテート繊維は木材パルプなどの植物由来の原料から作られた素材で化学繊維の仲間です。
シルクに似た肌触り、光沢感があり発色もとてもキレイなので様々な用途で使われています。
植物が原料なのに化学繊維の仲間ってちょっと不思議ですよね。
アセテートってどんな素材なのか解説していきます。
-目次-
1.アセテート繊維とは?
-化学繊維の種類
2.アセテート繊維の特徴
-メリット
-デメリット
-アセテートとトリアセテートの違い
-アセテートは環境に優しい素材
-アセテートを洗濯するときの注意
3.まとめ
1.アセテート繊維とは?
アセテート繊維とは木材パルプ(セルロース)を原料に、酢酸を反応させたアセチルセルロースより作られる繊維質です。
カタカナが多くて頭の上に「??」が浮かびそうですね。
分かりやすく言うと、アセテートとは木材パルプからとれる原料を使って薬品などで化学的に処理、合成した繊維のことです。
アセテートは「アセチル基」がいくつ付いているかによって呼び方が変わります。
“基”というのは化学の用語で原子の集合体のこと。
アセチル基が2つ付いていると「ジアセテート」、3つ付いていると「トリアセテート」になります。
アセテート繊維は化学繊維の中でも、「半合成繊維」に分類されます。
化学繊維の種類
繊維は大きく分けて「天然繊維」と「化学繊維」に分かれます。
天然繊維は植物や動物由来の繊維。
コットンやリネン、シルクやウールなどですね。
化学繊維は石油や石炭などを原料とした繊維や、製造過程で化学的処理がされている繊維です。
また、化学繊維の中でも原料や作り方によって合成繊維、半合成繊維、再生繊維と種類があります。
合成繊維
ポリエステル、ナイロン、ポリウレタンなどがあります。
石油、石炭などを原料とし、純化学的に合成された繊維です。
半合成繊維
アセテート、トリアセテート、プロミックスなど。
天然由来の原料を使用していますが化学的な処理をしているので合成繊維と再生繊維の中間的なものです。
天然原料の違いにより2種類に大別されます。
☆セルロース系(アセテート、トリアセテート)
木材パルプなどの植物由来の原料を使用した繊維です。
シルクのような柔らかさと光沢があります。
肌触りがよく上質に見えますが、シルクより安価、低コストで製品を作ることができます。
☆タンパク質系(プロミックス)
ミルクなど動物由来の原料を使用した繊維です。
シルクのような風合いや光沢があります。
摩擦や熱に弱いというデメリットがあり、現在は生産が中止されています。
再生繊維
木材パルプや綿花のくずなど天然のセルロースを溶解して繊維に再生したものです。
レーヨンやキュプラなどがあります。
2.アセテート繊維の特徴
メリット
◎適度な吸湿性、放湿性、保温性がある
◎綿やレーヨン、キュプラに比べて軽い
◎シルクのような光沢感
◎弾力性がありシワになりにくい
◎染色性が良い
◎熱可塑性がありプリーツ加工しやすい
※熱可塑性(ねつかそせい)とは熱すると軟化して形成しやすくなり、冷やすと再び固くなる性質のこと。
デメリット
▼マニュキュアや除光液が付くと溶ける
▼色物では排気ガスなどによる変色がある
▼アルカリ洗剤を使うと化学反応によって光沢が消失する
▼耐熱性が低い
▼強度が低い
※マニュキュアにはシンナーの主成分であるトルエン、除光液にはアセトンという溶剤が含まれています。
これらは塗料や樹脂を溶かす作用があります。
アセテートとトリアセテートの違い
アセテートとトリアセテートにはほとんど違いはありません。
ですが、アセチル基が複数ついたものは1つだけのアセテートよりも形状安定性や耐熱性、強度が改良されています。
トリアセテートは酢酸の量が多いためアセテートより吸湿性、吸水性が低くなります。
水分が染み込みにくいのでシミになりにくい、すぐに乾燥するなどの特徴があります。
アセテートは環境に優しい素材
アセテートは植物由来の繊維であるため、自然界に放置されても生分解されます。
生分解とはバクテリアや菌、その他の生物によって分解される作用のこと。
例えば、土の中に埋めておいたら微生物によって分解されて土へ還るというイメージです。
そのことから、アセテートは環境に優しい素材として注目されています。
アセテートの用途は様々で
・シャツやブラウスの服地、ジャケットやワンピースなどの裏地、スカーフ、ネクタイなどのファッションアイテム
・カーテン、メガネ拭き、傘などの雑貨
・たばこのフィルター
などに利用されています。
自分が普段使っているアイテムの素材を確認してみると面白いかもしれませんね。
アセテートを洗濯するときの注意
洗濯表示をよく確認して、水洗い不可でなければお家で洗濯ができます。
水洗い不可の洋服はクリーニングに出しましょう。
洗濯ができる場合でも、できるだけ洗濯機ではなく手洗いで洗います。
濡れた状態のアセテートはとてもデリケート。
洗濯機の脱水で強い力をかけると、シワが取れなくなってしまったり破損したりしてしまいます。
手洗いでもゴシゴシ洗わずに、洗剤を溶かした水に5分程度浸け置きするだけでOKです。
すすいだ後はタオルドライで優しく脱水してください。
洗剤もアルカリ性の成分が含まれていない「中性洗剤」を使用するようにしましょう。
洗濯するのに注意が必要なアセテートですが、正しく洗濯すれば風合いも損ねることなく長く着ることができます。
3.まとめ
アセテートは発色がよくきれいな生地なので、服や雑貨のほかディスプレイなど幅広い用途におすすめの素材です。
化学の授業のような解説もありましたが、アセテートという素材を知って頂くきっかけになれば嬉しいです。